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歌舞伎座吉例顔見世大歌舞伎2018 [歌舞伎!!]

11月17日と18日、歌舞伎座に行ってきました。
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名古屋からずっと良いお天気でしたが、富士山にだけ雲が掛かってました。でもこういう雲のかかり方は、意外と見ないかも。

11月の歌舞伎座は『吉例顔見世』。江戸時代、芝居小屋と役者は11月~10月までの1年の専属契約だったので、毎年11月にその年に出演する役者の顔見世が行われたそうです。『贔屓の役者さんはどの芝居小屋に出るんだろうなぁ~』という観客の期待をそそったり、『うちの芝居小屋にあの千両役者が出るぞ~』という宣伝の意味があったんですね。
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今はそういう意味合いは薄れましたが、それでも今でも顔見世興行は特別で、〇〇屋中心の座組ではなく、お家を越えて豪華な顔ぶれが揃います。

今回の演目はこちら。
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土曜日の夜の部、席は1階14列11番。花道からは5席目。

夜の部、一つ目の演目は『楼門五三桐(さんもんごさんのきり)』。
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天下の大盗賊石川五右衛門が南禅寺の楼門の上で、『絶景かな、絶景かな~』と。あまりにも有名な場面ですが、実はこの演目、この場面だけで終わるんですね~ なので上演時間も15分と、他の演目と比べてもかなり短め。
それでも、たった15分なのにものすごいストーリー性があって、面白い。
石川五右衛門がさきほどの名台詞を言った後、一羽の白鷹が何やら文を咥えてやって来る。それを読んだ五右衛門は、自分の宿敵が真柴久吉と知って怒ります。そこにやって来たのが当の真柴秀吉。この時に楼門がせり上がり、楼門の上の五右衛門と楼門の下の久吉が対峙する。。。というお話。
石川五右衛門は謎の多い人物ですが、庶民に人気があったので、いろいろな物語が作られました。その中でも豊臣秀吉との因縁が描かれたものが多いので、この出会いの場面が重要な意味を持つという訳ですね。
実は石川五右衛門を中村吉右衛門丈、真柴久吉を尾上菊五郎丈が勤める・・・これが今回の一番の面白さ。歌舞伎俳優の大幹部であるお二人が競演するのが、ファンにとっては堪らないのですね~

二つ目の演目は『文売り(ふみうり)』
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当代中村雀右衛門丈による舞踊です。清元連中の語りとの掛け合いが面白い演目。

三つ目の演目は『隅田川続俤(すみだがわごにちのおもかげ)法界坊』
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待ってました、四代目市川猿之助丈の登場~[ぴかぴか(新しい)] 今回の歌舞伎座では、猿之助丈はこの演目だけしか出ませんが、2時間40分もの長いお話なので見応えがありました。

さて「法界坊(ほうかいぼう)」というのは、色と欲に目がくらむ生臭坊主のこと。歌舞伎の主人公としては異色の汚さ。。。(^^; 猿之助丈も『こんなに汚い格好をしたことがない』と。
歌舞伎のお話では、初めは悪党として登場しても物語の最後にはぶっかえって良い人になる・・・というストーリーも多いし、大悪党ならそのままカッコよい大悪党で終わる…というのも多いデス。が、この法界坊は一つもカッコよいところがなく、かといって、善人になるということもありません。最後までどうしようもない生臭坊主のまま死んで、幽霊になります[ひらめき]
そんな目も当てられない主人公を猿之助丈が見事に演じます。生臭坊主ぶりも徹底しているし、幽霊になってもスゴイ。そして最後には、美しいお姫様に早変わり。。。
猿之助丈の立役、女方どちらも、今の歌舞伎界ではトップクラスの実力。それを一つの演目で同時に観られるなんて、かなりお得ですね~

ただちょっと今回感じたのは、あまりにも完璧な演技なので、観客からするとちょっと距離感があるというか、引いて観てしまうところがあるかなぁ~と思ったのでした。隙がないというか。自信に満ち溢れているというか。
歌舞伎の演目だけでなく、ドキュメンタリーやインタビューから拝察すると、猿之助丈は観客を喜ばせることだけを最優先に考えていて、『自分に出来る最高の演技で観客を満足させたい』と、他の俳優さん以上に思っておられるのが良く分かります。
そういう気持ちでおられることに、ファンとしても喜びを感じます。が、穿った見方をすると『こんなに素晴らしい演技をしているのだから、どうだ、面白いだろう~?? 面白くないはずがない』と暗に言われているような気もして。。。
なので、面白いと思った場面でも『あれ、今笑っちゃ、失礼かも...』という遠慮が生まれたり。今回の法界坊でも素の猿之助丈が垣間見えるアドリブや、法界坊の滑稽さが面白い場面がけっこうあったんですが、観客は割と静かでした。。。

比べるのもなんですが、海老さまとは真反対だなぁ~と。失礼ながら、海老さまは自分の演技や発声が完璧とは思っておられないようです。二人とも相当の鍛錬や努力をされていると思いますが、『自分はまだまだ・・・』と思い続けているのは、海老さまの方が強いように感じます。

もし台詞を間違えたとしても、海老さまならお客さんは『あらあら、まあまあ、がんばれぇ~』といって応援するけど、猿之助丈が間違えたなら『どうした?何があった?大丈夫?』という緊張感が生まれそうです。

とはいえ、決して猿之助丈を批判している訳でもなく、お二人ともどちらも個性があって、とても魅力的な俳優さんなので、これからもずっと応援していきたいと思います。


夜の歌舞伎座も雰囲気がいいですね~
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日曜日昼の部の席は、1階2列11番。花道の七三のほぼ真横、舞台上の俳優さんたちの表情も、オペラグラスなしでバッチリ見える席。
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昼の部一つ目の演目は『お江戸みやげ(おえどみやげ)』
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当代中村時蔵丈が勤めるお辻は、仲の良いおゆうと田舎から江戸に行商に出てきます。金勘定にシブいお辻と酒好きなおゆうとの掛け合いも面白いんですが、そんなお辻が初めて観た歌舞伎役者を見染めて・・・最後には、素敵な江戸みやげを持って田舎に帰るというお話。とてもほっこりとした、温かい気持ちになりました。
時蔵丈が見染めた歌舞伎役者はなんと、ご長男である中村梅枝丈。梅枝丈といえば十月の御園座の記事でも書きましたが、今注目の女方。が今回の役どころは、女方をやっている歌舞伎役者なので立役。立役だけど、やっぱりとてもキレイでした。

二つ目は『新歌舞伎十八番の内 素襖落(すおうおとし)』松羽目物の舞踊劇。
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当代尾上松緑丈が主人公の太郎冠者、お気に入りの巳之助丈が次郎冠者を勤めます。
とにかく、太郎冠者を勤める松緑丈の踊りがすごく素晴らしかったデス。松羽目物の舞踊劇といえば『棒しばり』が有名ですが、こちらの『素襖落』もそれ以上に難しい技術や表現力が要求される踊りだそうですヨ。
もちろん、巳之助丈の次郎冠者も良かったデス!

三つ目の演目は『十六夜清心(いざよいせいしん)』河竹黙阿弥の世話物。
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当代尾上菊五郎丈が勤めるお坊さんの誠心と、時蔵丈勤める遊女の十六夜が登場する心中物です。前半は二人の『もう、心中するしかない!』という悲壮な心情が清元の切ない唄で語られます。
後半は、心中したのに助かってしまったお坊さんが、誤って人を殺してしまい、愛する遊女も死んでしまったと思い込み自暴自棄になり、悪人として生きていく・・・というお話。

この前半の清元連中、実は清元栄寿太夫の初お目見得の舞台。清元栄寿太夫・・・そうです、二代目尾上右近丈です[ぴかぴか(新しい)] 
とても初お目見得とは思えないほど、高音域・低音域ともに張りのある美しい声音でした。清元は高音域を担う音楽ですが、俳優さんたちの心情をしっとりと唄いあげるという特徴があり、栄寿太夫丈の唄も、とてもしっとりと心地良い響きでした。

昨年のスーパー歌舞伎Ⅱワンピースで大怪我をした猿之助丈の代役として主人公ルフィを勤めたことで、一気に名が知られました。
実はこの時出待ちをしてしまって、右近丈から直筆サインを頂いてしまった・・・という不届き者ですが、それ以来、右近丈が勤める舞台はなるべく観に行っています。

今まで歌舞伎の音楽のことについてはほとんど無知でしたが、右近丈が七代目清元栄寿太夫を襲名されてからは清元などの歌舞伎音楽についても少し勉強しました。他の歌舞伎音楽も含めて、またの機会に書いてみます。







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古典への誘い『蛇柳』2018年11月 [歌舞伎!!]

今日は、海老さまの『古典への誘い』を観るために、東海市芸術劇場に行ってきました~ 

東海市芸術劇場のある太田川駅は、名古屋駅から名鉄線の特急で約15分。劇場は駅に隣接しているので意外と便利!
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なかなかきれいな劇場ですね。

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『古典への誘い』は、歌舞伎座のようにいつでも歌舞伎が観られる劇場になかなか簡単には行けないない地方の人たちにも歌舞伎を楽しんでもらいたいという思いで、海老さまが6年前から始めた自主公演です。
なので、全国各地の劇場やホールで上演されますが、普段あまり歌舞伎が上演されないホールもあるので、『花道はあるのかなぁ~』と心配しておりました。

が、そんな心配はご無用[るんるん]
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左側前方の客席2列分を外して、特設の花道が出来てました~[ぴかぴか(新しい)]
しかも私の席は、1階10列3番。。。チケットが手元に届いた時『3番って、花道よりも左側?それやったら後ろ姿しか見えへんやん[あせあせ(飛び散る汗)]』と思っていたら、特設花道と鳥屋(とや)のすぐ真横の席でした[るんるん]
なんとこの席、鳥屋の中で海老さまがスタンバイする時の足音や衣擦れの音、ひそかな会話が聞こえてくる[exclamation] 

さて、プログラムは。『古典への誘い』というだけあって、歌舞伎だけではありません。
一つ目は『和太鼓 響』。海老さまとの共演の機会も多い、和太鼓のプロ、辻勝さんによるもの。
とにかく、圧巻[ひらめき] 
お祭りやイベントで和太鼓集団が演奏しているのを映像で観たことはありますが、舞台の上の演奏を生で聴くのは初めてでした。たった一人で、その場を動くことなくただひたすらに太鼓を叩き続ける・・・メチャクチャカッコ良かったです。
複数ではなく単独での演奏なので、音やリズムの切れ目があってもよさそうなのにまったくそれがない。二本のバチだけで始終音が鳴り続けていて、しかもリズムが刻々と変化する。。。太鼓って、音の強弱はあっても音階がなく、リズムを刻むだけのもの…と思っていましたが、ちゃんと音楽、曲になっていました。
あんまりにもスゴイので、オペラグラスで辻さんの腕と肩の筋肉、ガン見してました[わーい(嬉しい顔)] 惚れ惚れするほど、美しい~[ひらめき]

ここでご挨拶ということで、海老さまが登場[ぴかぴか(新しい)]
通常の歌舞伎公演では考えられない、質問コーナーがありました[exclamation] 会場の観客に向かって『質問のある方は、手を上げてください』と。勇気ある4名の方が質問してました。
『歌舞伎をやっていて、一番楽しいと思うことは?』という質問に、『私は、歌舞伎が楽しいと思ったことがないです』と・・・(^^; この前OAされたプロフェッショナルの流儀でも、同じようなことをコメントされていたかも。この答えを聞くと、市川團十郎家を背負っている覚悟や責任が、海老さまにとっては半端ないくらい大きなものなんだなぁ~と思うのです。

二つ目の演目は、市川福太郎丈による『子守』、市川九團次丈と大谷廣松丈による『三社祭』の舞踊です。
どちらもこれまでに別の俳優さんの舞踊を観たことがありますが、三社祭は特に印象深い踊りです。アクロバティックでおどけた動きが多いので、楽しくなります。
歌舞伎初心者にとっては、踊りにストーリーがあって分かりやすい舞踊です。

三つ目『蛇柳(じゃやなぎ)』 成田屋のお家芸歌舞伎十八番の一つで、長らく上演が途絶えていたものを海老さまが復活させました。
お話し自体はとてもシンプルなんですが、海老さまがまったく異なる三役を勤めるところ、そして早変わりが見もの。
オペラグラスで観ると舞台上の細かな仕掛けや俳優さんたちの手元が良く見えるのですが、立ち回りの最中に一瞬海老さまの姿が見えなくなり、『あれ?今、なんかやったかも??』と思う場面がありました。そのお役は着物を頭に覆っているので、顔が見えないお役。でもその後もその前と変わらない立ち回りが続き...
すると突然、鳥屋の中から海老さまの声が。『舞台の上にいるのは海老さまではないの~?? いつの間に[exclamation&question]』と会場がどよめき。。。
見事な入れ替わりで、ため息が出ました。涙も出ました。大興奮[ぴかぴか(新しい)]

歌舞伎十八番の中には、上演が途絶えていて資料もほとんどないというものもいくつかありますが、海老さまは大切なお家の芸なので蘇らせたいと、少ない資料を基に復活に挑んでおられます。これからもそういった演目に出会えることを楽しみにしています。

今日の海老さまのブログで、カーテンコールの時の写真と動画がアップされてました。写真、よお~く見ると、私の右手が写ってました~(^^;
お土産はこちら。
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海老蔵サンダー、箱買い。海老さまのシールが、めっちゃカワ(・∀・)イイ!!
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